今の若者が内向きな理由

昨日のNHKの番組、


NHKスペシャル「生激論2010 にっぽん大転換!?」


の最後の方で、今の若者に元気がない、というような話になりました。


今の若者に元気がなく、内向きだ。つまり外国に出ようとしない、という話になりました。建築家の安藤忠雄さんは自身がアジアで仕事をしていることを踏まえた上で、アジアの人達で日本に関心を寄せている人はたくさんいるが、日本人がアジアに心を開いていない、と仰っていました。政権からは菅副総理が出ていましたが、菅氏も、坂の上の雲を取り上げて、当時のように外の国に関心を持ち外へ出て行こう、という若者がいない、と仰っていました。どちらの方も、現在の若者、しかもエリート層と呼ばれるような若者達とも直接触れ合っているでしょうから(大手企業の社員や官僚など)、そういった方々でさえも今は内向きになってしまっているという状況なのでしょう。


しかし、それの原因は本当に“元気がないから”なのでしょうか。


僕は「坂の上の雲」のドラマも小説も見たり読んだりしていません。ただ時代背景として、明治の世となり、西欧列強に植民地とされないように日本が急激に近代化へ舵を切った時代の話だと認識しています。その時代で生きる若者達の青春群像を描いている小説。そうゆうストーリーだと把握しています。それでは、その時代、外の国に関心を持ち、自身も積極的に外国へ出て勉強しようとした若者の動機とはなんでしょうか。それは“近代国家”という西洋が作り出してきた価値観や技術を学んで日本を列強の植民地にさせない、この日本を守るんだ、という気持ちではないでしょうか。


純粋に外国を見てみたいという人もいたでしょう。しかし、それは当時、鎖国が解けたばかりでなおかつ今よりインフラが整備されていなかったこともあり、外国の情報が少ないがゆえだとも言えます。実際に体験してみなければ分からない空気というものがあるとは言え、今は大概の情報・知識が日本にいながらにして手に入りますし、今の日本にはアジアでも屈指のレベルで情報・知識が集まっているのではないかと思います。英語ができれば、インターネットから更にたくさんの情報・知識を仕入れることができます。むしろアジアの人が日本に関心を寄せるのは、日本にたくさんの知識や技術があるからではないでしょうか。


つまり、今の若者に外国に行く理由も動機もないんです。だから行かない、関心がない。


元気がないということではありません。


しかし、そもそも、上記のように、国が危機だ、という危機感から生まれる動機には強烈なものがあります。だから現代でもそれだけの問題意識、危機感を持っている若者は恐らく元気に動いているのではないかと思います。しかし、その若者の元気をそいでいるのはむしろ保守的な中高年じゃないでしょうか。きっと、そのことも件の小説「坂の上の雲」に描かれていそうです。(小説「竜馬がゆく」では土佐藩の藩主を始め上士はみな保守的に描かれていました。だから竜馬は脱藩して自由に動いたのです)


今日本はグローバル化とデフレにさらされ国の仕組みが脅かされています。そういった意味では明治のような危機的状況と言っても言いすぎではない。膨大な借金と、なおも変わらない借金体質があればなおさらです。しかし、当時もそうであったように、そこに強烈な危機感を抱く若者はごく少数でしかないんです。明治時代では、そのごく少数の若者達が育ち結果的に歴史的な成果を上げた。


若者よ、海外に関心を持ち、元気に外へ出よ、という短絡的な話ではありません。若者がそれぞれ今いる場所で頑張ろう、その場所を良くしよう、とどれだけ思うかが肝心なんです。そして、その関心が国の仕組みの危機に及び、なおかつ、今の日本にその危機を打開する術がないということにまで考えが及んで始めて外国へ行こう、となるのが筋なんだと思います。


そういった意味では、昭和を生きた方々からは物足りないかもしれませんが、若者の感覚は素直だと感じます。